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「ネイティブに伝わらない表現」、「ネイティブが毎日使うフレーズ集」などのタイトルの本が書店に並んでいるのを見かけます。
日本の学校教育でもネイティブの講師を大勢招いていますし、英会話教室においても講師がネイティブであることをさかんに宣伝しています。
私たち非ネイティブである日本人が、ネイティブを目標に掲げて勉強する意味はあるのでしょうか?
英語を使って生計を立てている、通訳者の目線から検証したいと思います。
結論から申し上げますと、英語学習はネイティブを目標にするべきではありません。
筆者自身、長年通訳業界に携わり多くの通訳者と関わっていますが、ネイティブ・非ネイティブの垣根はほとんど感じたことがありません。
英語ネイティブでなくとも優秀な通訳者は大勢いますし、また逆に日英ダブルネイティブであっても優秀でない通訳者は大勢います。
その理由をひとつずつご説明します。
英語を第一言語として使用している国は以下の8か国のみです。
英国、アイルランド、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール※注釈1
これは世界人口の5%にすぎません。
上記の8ケ国は経済大国が多い=日本との関わりも深いことを意味しますので、人口割合と比べれば関わる機会は多いかもしれません。
それでも、非ネイティブのクライアントと関わる機会が圧倒的に多いでしょう。
ドイツ人、フランス人、インド人、中国人、韓国人、ブラジル人…
英語はネイティブと意思疎通を図るためだけのツールではありません。
「日本語を介ない外国人と意思疎通を図るツール」でもあるのです。
※注釈1
英語を第一言語とする国は、実は中米諸国やアフリカにも多数存在します。しかしながら、それらの国々は経済規模が小さく日本との国交やビジネス取引が極めて少ない、または、様々な民族が入り乱れ公用語が多数存在し第一言語に指定されているにも関わらず英語を介さない人口が多い。上記の理由から、本記事においては便宜上、英語を第一言語とする国を8か国としました。
英語ネイティブと一口にいっても、発音は実にバラエティに富んでいます。
アメリカ英語とイギリス英語の違いは耳にしたことがあると思いますが、イギリス英語だけを例に挙げても一様ではありません。
スコットランドやアイルランドは訛りがとても強いですし、また、同じイングランド内でもヨークシャー訛りやコックニー訛りなど、地域によって訛りがまったく違います。
ネイティブが全員BBCのニュースキャスターのような綺麗な英語を話すことを想像される方もおられるかもしれませんが、現実はそうではありません。
スコットランド人と北アイルランド人とがバーで会話していて、お互い「何を言っているか聞き取れない」という笑い話もあります。
ネイティブ同士でも発音が違えばコミュニケーションが成り立たないことがあるのです。
そういえば、筆者にも似たような体験がありました。
福岡県久留米市で散歩中におじいちゃんが話しかけてくれたのですが、言っていることが半分も理解できずうんうんと頷くばかりでした。
日本語でも同じようなことがあるものですね。
先日、弊社の案件で良いモデルケースが出ましたのでご紹介します。
アメリカの企業から通訳の依頼がありました。
こちらは日本語・英語共にネイティブの経験豊富な通訳者を手配しましたが、後日クライアントから「別な通訳者を手配してほしい」というリクエストを受けました。
クライアントになにが問題だったのかを尋ねると、私がまったく予想していない答えが返ってきました。
「彼(通訳者)の英語がよく聞き取れない。言っていることが聞き取れなければ仕事にならない」。
その通訳者は、イギリス育ちで生粋のイギリス英語を話し、若干早口でしゃべる傾向のある人でした。
クライアントはアメリカの企業でしたが、担当者はアルゼンチン人。
彼の母国語はスペイン語であり、英語はあまり得意ではありませんでした。
アメリカ英語に馴染んでいる彼にとって、早口のイギリス英語は聞き取りにくいと感じたのでしょう。
「英語ネイティブが正とは限らない」ことを象徴する良い例だと思います。
そもそも、非ネイティブがネイティブに「近づく」ことは可能だけれども、ネイティブに「なる」ことは不可能です。
ネイティブ英語を無闇矢鱈に支持する日本の英語教育には違和感を覚えてしまいます。
筆者自身は日本語ネイティブ、英語は非ネイティブの通訳者です。
筆者にとって英語を習得する目的は「通訳ができる、議論・交渉・プレゼンができる、自分の気持ちや考えを的確に表現できる」です。
言い換えれば、これ以上の能力は必要としていません。
英語を学習する理由は人によってさまざまです。
一般的には、仕事や旅行などの場面で、外国人との意思疎通をスムーズにしたいことが目的であると思います。
英語学習においては、無目的にネイティブ英語に近づくことを目指すのではなく、自分の目的に合った目標を設定することが大事であると思います。
INTERP合同会社は、法人向けグローバル人材育成プログラムを提供しています。
本プログラムでは、日本人に欠けている「英語力」と「プレゼン力」に特化した独自のプログラムを組んでいます。
具体的なシーン・課題・目標に合わせ、海外ビジネスの現場で本当に使える英語力を習得します。
ご入用の際はぜひご相談ください。
INTERP合同会社代表。28歳で通訳者としてのキャリアをスタート。50以上の職歴と複数の小規模事業の起業経験を通じて培った実務力を活かし、通訳にとどまらず、国内外のビジネスシーンで包括的な支援を提供してきました。「海外ビジネスの円滑化」と「関係者全員の利益と成長」を理念に掲げ、近年は人材育成に注力し、日本経済の活性化に微力ながら寄与したいと考えています。横浜市と米国ダラスで幼少期を過ごし、成人後は主に東京都、北海道、豪州シドニーに在住。2023年に家族と共にマルタ共和国に移住。
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