外国人の日本語通訳者が育たない理由

増える在日外国人

2025年2月現在、在日外国人の人口は358万人にも上ります。※注釈1
これは、日本第2位の人口を抱える横浜市にほぼ匹敵する規模です。

近年、長期的に日本に在住する外国人は増えています。
少子高齢化による生産年齢人口の減少を補う目的で、日本政府は外国人労働者の受け入れを促進しており、この傾向は今後も続くと予測されます。

在日外国人の背景は多様です。学生、労働者、起業家、日本人配偶者など、立場も目的もさまざまな人々が集まっています。
高賃金を求める人、漫画やゲーム文化に憧れる人、武術や禅などの東洋思想に魅了された人、テクノロジーが好きな人など、日本への関心の理由も様々です。

日本語通訳者になりたい外国人の受け皿がない日本

上記の背景に伴い、日本語力の高い外国人が増えています。

「日本語通訳者になりたい」または「プロを目指すほどではないが通訳スキルを身につけたい」という意欲を持つ外国人は少なくありません。
日本文化に関心を抱いて来日した外国人にとって、言語力の向上に伴って通訳スキルを習得したいという願望は自然な流れと言えるでしょう。

また、「日本語―他言語」ペアの通訳者は世界的にみると希少です。
日本は経済大国で海外との取引が多く、通訳需要も見込めるため、キャリア構築の観点からも日本語通訳者を目指す外国人が一定数います。

しかし、残念なことに、日本には外国人の日本語通訳者を受け入れる体制が十分ではありません。
その要因として、以下の2点が挙げられます。

① 通訳学校の受け入れ体制の未整備

通訳学校は通訳者を養成するための教育機関ですが、そのスタイルは実に「日本的」です。

通訳という国際社会で活躍する職業の教育機関なのだから、さぞかしグローバルな環境であろうと想像するところですが、実態はそうではありません。
日本で大手と呼ばれる通訳学校の講師や生徒のほとんどは日本人で、外国人は少数派です。
帰国子女は一定数いますが、生徒の実に90～95％を日本人が占めています。
カリキュラムも日本語ネイティブ向けに設計されており、日本語―英語を主軸に教えています。

また、通訳学校では「日本的」な先輩・後輩文化が色濃く根付いています。
同時通訳の場合、一般的に2～3人のグループを組んで一緒に仕事をしますが、このような職場環境は外国人にとって働きやすいとは言い難いでしょう。

② 「ガイジン通訳者」への偏見

日本クライアントが日本人の通訳者をリクエストすることは、実は珍しくありません。
「日本人でなければ日本人特有の機微やビジネス慣習が理解できない」と考える日本人は一定数おり、通訳者に日本人が優先されるケースがあるのが現状です。

この傾向は、東京や大阪などの大都市圏では近年あまり見られませんが、地方にいくほど顕著になります。
グローバルな職業の代表格である通訳という職業においてさえ、日本のガラパゴス化が浮き彫りになっているのです。

現状を打開するために

この悩ましい現状を打開しようとする個人・団体は少なからず出てきています。

職業選択において、人種、国籍、性別などによる差別は容認されるべきではありません。
その意識は国際社会においてスタンダードであり、先進国である日本でも同じ標準が当然適用されるべきでしょう。

外国人の日本語通訳者を増やすためには、教育機関やクライアント、ひいては日本社会全体の意識改革が不可欠です。
多様な人材が活躍できる環境を整えることは、通訳業界だけでなく日本全体の経済・社会の発展にもつながるでしょう。

INTERP合同会社の取り組み「通訳育成」

INTERPは「通訳育成プログラム」を提供し、日本語通訳者を目指すすべての人に広く門戸を開いています。
実践的な通訳スキルの指導だけでなく、他国のビジネス慣習の理解や、個々人に合わせたキャリア構築のアドバイスに注力し、多様性に富んだ通訳者の育成を目指しています。

※注釈1
参考資料：出入国在留管理庁 「令和６年６月末現在における在留外国人数について」（2025年１月27日取得：https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00047.html）