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先月の記事では「良いエージェントの選び方」についてお伝えしました。

本記事では、その続きとして「エージェントに選ばれる通訳者になるためのポイント」についてお伝えします。
筆者は、通訳業界において長年、フリーランス通訳者として、そしてエージェントとして、両方の立場からこの業界に携わってきました。
その経験を通じて培(つちか)った知見をもとに、現場の実情に即してお伝えします。
フリーランス通訳者がエージェントに登録する流れは、どこも概(おおむ)ね共通しています。
履歴書・職務経歴書を提出し、エージェント担当者と面談をします。
その後、登録者の経験やスキルに合致する案件が出た段階で、エージェントから仕事の依頼が来ます。
エージェントによっては、登録通訳者が数百人、場合によっては千人以上に上ることもあります。
その中からどのようなプロセスを経て候補者が選ばれるのでしょうか?
案件に関連する経験とスキルを持っている登録者から順番に声をかけるのが原則ですが、加味される要因はそれだけではありません。
ここでは、通訳業界に限定し、エージェントの担当者が注目する3つのポイントについてお伝えします。それは、
ひとつずつ見ていきましょう。

通訳者の中には、まれに「私は通訳者ですので通訳以外の業務は一切行いません」というスタンスを貫く方がいらっしゃいます。
率直に、このタイプの通訳者はエージェントに敬遠されます。
通訳者の本業は言語変換です。
しかし、実際の企業クライアントの現場では、通訳業務に付随するさまざまな役割も期待されることが少なくありません。
よくあるのは、プロジェクトを円滑に進めるために、クライアントと取引先との間の調整役を担うケースです。
このような場面では、二者間の立場や意図を汲み取り、潤滑油のように関係性を構築するスキルが求められます。
また、日本滞在中の外国人の身の回りのサポート(ホテルとのやり取りや日常の買い物など)や、緊急時には病院や警察への同行を求められる現場もあります。
特に、AI技術が進歩した現代ビジネスにおいては、通訳の現場でも単なる言語変換だけでなく、人間ならではのコーディネーション力が求められる案件が今後ますます増えていくことが予想されます。
このような背景を理解して、通訳業務だけでなくそれに付随する業務も柔軟に対応してくれる通訳者の方が、クライアントにとっては心強い存在に感じられます。
ただし、クライアントによっては過度な要求をしてくる場合もあるので、線引きはすべきでしょう。
本来の業務内容から明らかに逸脱する依頼は、断固として断る態度も重要です。

近年、通訳業界に限らず、社会全体において権利意識の高まりが見られます。
それ自体は健全な流れですが、一部では必要以上に自分の権利を主張する方も増えています。
不当な扱いを避けて搾取されないよう自己防衛するのは正当です。
しかし、それが過剰になりすぎて、自分の権利ばかりを主張するクレーマーになってしまっては、エージェントから敬遠されてしまいます。
根拠のない報酬額の値上げ要求や、交通費や宿泊費の過剰請求、実態にそぐわない時間外業務の正当化などは典型的な例です。
フリーランス通訳者は、いちサービスプロバイダーとして、エージェントやエンドユーザーに対してどれだけの価値を提供できるかを意識する必要があります。
その価値を理解してもらえれば、エージェントから自然と選ばれる存在になるでしょう。
「人柄」と聞くと、曖昧で不透明な選定基準に感じられるかもしれません。
しかし、この選定基準を単なる感情論や人事担当者の相性と決めつけるのは早計です。
エージェントの立場として、究極的な判断基準は「この人に案件を安心して任せられるか」です。
通訳者は、二者間のコミュニケーションを仲介する存在です。
「感じが悪い」「一緒に仕事をしたくない」と思わせてしまっては、たとえ能力が高くても通訳者として適任とは言えません。
広義になってしまいますが、コミュニケーション力や協調性、誠実さを含む「人間力」は選定結果に大きく影響します。
「たかだか書類審査と面談だけで、エージェントがそこまで理解できるはずがない」と思われるかもしれませんが、それは正しくありません。
優秀で経験豊富な人事担当者は、日々数多くの候補者と接しています。
30分程度の面談と数回のEメールのやり取りだけでも、おおよその印象と信頼度を見抜くことができます。

以上、エージェントに選ばれる通訳者になるためのポイント3点をお伝えしました。
強調したいのは、通訳者は単に言語変換だけをする存在ではなく、人と人、組織と組織をつなぐ重要な橋渡しです。
次回の記事では、「後編:エージェントがもたらす価値」についてお伝えします。
INTERP合同会社代表。株式会社 S.H.C. Collaborationグローバル教育社外顧問。横浜市と米国ダラスで幼少期を過ごす。家族との時間とワークライフバランスを大切にするため、現在はマルタ共和国を拠点にリモートで経営を行っている。
2011年より通訳者として活動を開始し、現在は国際イベントと人材育成に注力。海外ビジネスの円滑化を支援するため、セミナーや情報発信にも積極的に取り組んでいる。
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