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筆者は2023年よりマルタ共和国に在住し、日本法人をリモートで経営しています。
取引先やスタッフ、友人などから、公私問わずそのビジネススタイル・ライフスタイルについて質問を受けることが多いため、本記事では、海外在住で日本法人を運営する際の実務的なポイントや、筆者自身の経験を共有します。
ビジネス面に焦点を当てた内容ですが、プライベート面でこのようなライフスタイルに興味がある方にも参考になれば幸いです。
近年流行している「デジタルノマド」というコンセプトがありますが、筆者のケースは少し勝手が違います。
筆者は家族と共にマルタに定住し、子供たちも現地の学校へ通っています。
「ノマド」という言葉が示す遊牧民的な移動を前提とする生活ではありません。
また、デジタルノマドはどちらかというと、プログラマーやライターなどのIT系フリーランス(個人事業主)のニュアンスが強く、法人を運営する筆者のケースと合致しません。
従って、デジタルノマドとは似ているようで異なる存在かと思います。
つい最近まで、日本法人の代表者は「日本在住でなければならない」と定められていましたが、2015年の法改正によりその制約は撤廃されました。※注釈1
海外在住者が日本でビジネスを行う場合、個人事業主として活動する選択肢もあります。
しかし、日本の法律やルールの多くが日本在住を前提に作られているため、住民票やマイナンバーがないことで各種手続きに障害が出ることがあります。
具体的には、税金の支払いや役所の届出、携帯電話など各種サービスの契約などが挙げられますが、最大の障害は銀行口座です。
海外在住者は、原則として日本の銀行口座を開設・維持することができません。※注釈2
日本に口座がなければ報酬を受け取れないため、そもそも日本でビジネスをするのが極めて困難になってしまうのです。
その点、日本に法人を立てておくとスムーズです。
法人は日本国内で独立した「法的な存在」として扱われるため、各種契約や税務手続きがスムーズに行えます。
国内でも100%リモートワークの方は多くいらっしゃると思いますが、それが国外でも大きな違いはありません。
会議や打合せ、面談はすべてオンラインで対応できますし、契約書は電子サインで完結します。
例外として、役所関連の手続きはほとんどが紙ベースなので、日本在住のスタッフに依頼しています。
時差の影響もほとんどなく、マルタと日本の時差は8時間(サマータイム期間中は7時間)ですが、会議や電話はお互いの勤務時間に合わせて柔軟にスケジュール調整しています。
唯一のデメリットは、日本のクライアントやスタッフとの対面コミュニケーションの不足です。
ビデオ会議・電話・チャット・メールで物理的にはすべて済むのですが、偶然の会話や直接顔を合わせることから生まれる信頼関係やアイデアの醸成は、オンラインではなかなか再現できません。
日本帰国時には、クライアントやスタッフと直接お会いして食事を共にするなど、対面でコミュニケーションを取る時間を確保するよう努めています。
海外リモート経営の実施にあたり、もっとも大きなインパクトはコロナ渦でした。
コロナによってリモートワークが急速に一般化し、対面に依存しない働き方が社会に受け入れられるようになりました。
2020年、筆者は東京オリンピックの業務に携わりましたが、国境を越えた移動が厳しく制限される中、さまざまな国の関係者とともにオンラインですべての業務を進めました。
この経験がモデルケースとなり、海外からの業務運営が可能であるという確信を与えてくれました。
筆者はコロナが収束した2023年に、日本に事業を残したまま海外に居を移す決断をしました。
「クライアントからの心象は悪くならないか」という質問をよく受けますが、特にネガティブな影響を感じたことはありません。
現代ビジネスで重要視されるのは成果であり、今の時代に「遠くにいるから信用できない」という印象を与えることは少ないと思います。
海外クライアントは特にそのようなバイアスがなく、むしろDX推進やライフワークバランス向上の面からプラスの印象を持たれることが多いと感じています。
海外在住であることがプラスに作用することもあります。
弊社は通訳や海外ビジネスサポートを提供しており、ヨーロッパ拠点の地の利を活かして現地調査や出張同行といったサービスを提供しています。
ヨーロッパ市場に関心を持つ日本クライアントにとって、現地事情に詳しい協力者がいることが大きな強みとなっています。
また、あまり知られていませんが、マルタは英語が広く普及しており留学先として注目されています。
この市況を活かし、日本の留学エージェントと協業して、留学生に対する勉強会やインターンシップ、参加型ビジネス体験プログラムなどの企画を進めています。
私たちは、仕事を通じて関係者全員の人生をより豊かにすることを目指しています。
日本社会におけるワークライフバランスの欠如は海外でも知られており、サービス残業や長時間出勤といった課題は依然として根強く残っています。
それでも、近年では働き方改革やジョブ型雇用の促進が進み、若い世代を中心に少しずつ意識改革が進んできているようです。
筆者自身は、家族と共により良い住環境を求めて、ひいては人生を豊かにするために今の生活を実践しています。
海外からのリモート経営は、業種や環境によって向き不向きがあるかもしれません。
上記はあくまで筆者個人の経験の共有に過ぎませんが、多様な働き方のモデルケースを提案し、弊社のポリシーである「関係者全員の利益と成長」を形に囚われず体現できればと思っています。
※注釈1
参考資料:法務省「外国人・海外居住者の方の商業・法人登記の手続について」(2024年12月15日取得:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00104.html)
※注釈2
数は限られているが、海外居住者(正式呼称は「非居住者」)でも開設・維持できる日本の銀行は存在する。ただし、日本口座から海外口座へ送金できなかったり、手続きが凡雑であることが多い。近年では、これらの問題を解決するフィンテック企業も出てきている。
INTERP合同会社代表。28歳で通訳者としてのキャリアをスタート。50以上の職歴と複数の小規模事業の起業経験を通じて培った実務力を活かし、通訳にとどまらず、国内外のビジネスシーンで包括的な支援を提供してきました。「海外ビジネスの円滑化」と「関係者全員の利益と成長」を理念に掲げ、近年は人材育成に注力し、日本経済の活性化に微力ながら寄与したいと考えています。横浜市と米国ダラスで幼少期を過ごし、成人後は主に東京都、北海道、豪州シドニーに在住。2023年に家族と共にマルタ共和国に移住。
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