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2011年3月11日、日本は東日本大震災という未曾有(みぞう)の大打撃に襲われました。
その影響で、国内の原子力発電所は全台停止を余儀なくされ、全国的に電力不足の懸念が高まりました。
政府は、計画停電や節電の呼びかけなどを通して需要の抑制を図りました。
それでも、全発電量の1/3を賄(まかな)っていた原子力発電がすべて停止してしまったのは大きな打撃で、再稼働の見込みも当面立たないという状況は続きました。
そこで政府は、国内の電力不足を補うため、海外から仮設の発電設備を輸入する方針を打ち出しました。
その発電設備の運用のために、多くの外国人エンジニアが来日しました。
そこで、外国人エンジニアと国内企業間の通訳需要が生まれ、弊社は2011年11月から2018年5月、延べ6年7か月という長期間に渡ってプロジェクトをサポートさせていただきました。
弊社は、茨城県ひたちなか市、北海道苫小牧市、北海道勇払郡安平町の計3カ所において、現場通訳サービスを提供しました。
発電設備の設置工事・試運転から始まり、運用・保守を経て解体まで、一気通貫でサポートを提供しました。
非常に規模が大きいプロジェクトであったにも関わらず、通訳者1名体制であったため、打ち合わせ、現場作業、資料翻訳、緊急会議、トラブル時対応など、来日外国人の生活面サポートも含めてマルチな活躍が求められました。
本プロジェクトは、通訳力だけでなく精神的・身体的なタフさが要求されるものでした。
設置工事・試運転は、納期が厳しい中、非常に張り詰めた空気で現場作業が行われました。
「国内の電力危機を救う」という大きな責務が、現場の緊張感を高めたのでしょう。
内容も技術的に深い議題が多く、通訳の難易度も非常に高いものでした。
運用中は、昼夜問わず24時間体制で現場をサポートしました。
北海道の冬は寒さが厳しく暖房が生活に欠かせません。
暖房器具は多くの電力を消費するため、冬の忙しさはひとしおです。
早朝や深夜のイレギュラーな時間帯の出番も多く、休憩室で仮眠を取りながら対応をしました。
通訳をする外部環境も多様でした。
-24℃の屋外で通訳する場面もあれば、人の声がほとんど聞こえないほど大きな機械騒音の中で通訳をする場面もありました。
病気やケガをした外国人エンジニアと共に病院に同行することもありました。
また、外国人エンジニアたちは長期の単身海外赴任であったため、ときには羽目をはずしたくなってどんちゃん騒ぎに付き合ったり…これも良い思い出です。
外国人エンジニアたちの多くは、「日本の電力危機を救う」という強い正義感と使命感を持っており、彼らの仕事に対する姿勢は尊敬に値するものでした。
彼らと同じ釜の飯を食べ、ときには寝食を共にし、同じ目標に向かって共に仕事ができたことは素晴らしい経験でした。
彼らのような外国人エンジニア、そして多くの日本側の関係者の力によって、電力危機という大きな問題を乗り越えることができました。
表に出る存在ではありませんが、縁の下の力持ちとしてインフラを支えてくれた人たちに、私たち日本人は感謝の心を忘れてはならないと思います。
INTERP合同会社代表。28歳で通訳者としてのキャリアをスタート。50以上の職歴と複数の小規模事業の起業経験を通じて培った実務力を活かし、通訳にとどまらず、国内外のビジネスシーンで包括的な支援を提供してきました。「海外ビジネスの円滑化」と「関係者全員の利益と成長」を理念に掲げ、近年は人材育成に注力し、日本経済の活性化に微力ながら寄与したいと考えています。横浜市と米国ダラスで幼少期を過ごし、成人後は主に東京都、北海道、豪州シドニーに在住。2023年に家族と共にマルタ共和国に移住。
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