日本人は会議が苦手?海外ビジネス会議において押さえるべき2つのポイント

日本人は会議が苦手?海外ビジネス会議において押さえるべき2つのポイント
この記事の目次

日本人は会議に対して強い苦手意識を持っている

頭に手をやって悩める日本人ビジネスマン

「日本人は会議下手」と言われたら、あなたはどう思いますか?

「まさしくその通り、うちの会社なんてムダな会議ばかりでうんざりする」
と深くうなずく方も多いでしょうし、

「いや日本もグローバル競争で切磋琢磨しているのだからそんなことはないはずだ」
と反論される方もいらっしゃるでしょう。

試しに、グーグル検索で「日本人・会議・下手」と入力してみたところ、1090万件の記事がヒットしました。
それに対し、「日本人・会議・上手」のキーワードでは、ほぼ同数の記事がヒットしましたが、内容は「会議の進め方がうまくなるコツ」の類ばかりで、日本人の会議が上手いといった内容の記事は一本も見つけることができませんでした。※注釈1

この結果だけを見ると、日本人は会議に対して強い苦手意識を持っていることがうかがえますが、実際のところはどうなのでしょう。

※注釈1
リサーチ日2022年10月23日付。グーグル検索結果先頭50件のみを確認。

国民性によって違う会議の進め方

若い外国人7人の会議

会議の進め方には国民性が強く出ます。
比較として他国の特色をいくつか挙げてみましょう。※注釈2

ドイツ人・直接的な物言いを好む
・ペースを乱さず淡々と論理を展開する
・詰め将棋を思わせる展開
アメリカ人・前置きが少ない
・スピード感があり、持ち前のプレゼン力でガンガン押す
イギリス人・皮肉やユーモア、比喩表現を織り混ぜながら、論理を組み立てていく
・相手の論理に真っ向から否定することは少なく、一度受け止めてから「いなし」てソフトランディングさせる技術が高い
フランス人・イギリス人と同じく間接的表現を多用するが、説明が長い
インド人・相手が口を挟む隙がないほど、とにかくしゃべり倒す

上記の例と比較すると、日本人の特徴は以下にようにまとめることができるでしょう。

  • あいまいな表現を好み、口下手で主張が弱い
  • 用意したプレゼン資料を読むだけに留まる

※注釈2
参考文献:異文化教育の第一人者であるリチャード・D・ルイス著「文化が衝突するとき」

交渉・議論で不利な状況に立たされる日本人

欧米人と比べて、日本人は「押しが弱い・主張しない」とはよく言われることですが、ビジネスの場でもその傾向は顕著に表れていると感じます。

弊所がお手伝いさせていただく現場のほとんどが、「日本企業と海外企業間のビジネス会議」という図式ですが、主たる内容は交渉、クレーム、プレゼンの3つです。
つまり、会議の目的が明確であり、「こういう方向に結論を持っていきたい」という強い意思が両者にある状況です。

このような場面では、日本人の特徴である「あいまいな表現を好み、口下手で主張が弱い、用意したプレゼン資料を読むだけに留まる」は、アドバンテージになりません。
交渉・議論で不利な状況に立たされるという、ビジネス面での大きなデメリットが生じます。

交渉・議論の技術は、トレーニングで質を向上できる

笑顔の外国人ビジネスマン男性と握手する日本人ビジネスマン男性

しかしながら、日本人の「押しが弱い・主張しない」国民性が、海外ビジネス会議の場において不利に働いてしまう、と短絡的に解釈するのは正しくありません。
日本の学校教育では、教師の講義を一方的に傾聴するのが一般的で、プレゼンや議論の練習をする機会が海外に比べて著しく少ないという背景があります。

社会に出てからも、自分の感覚だけでなんとなく会議をこなしている方々が多いのではないでしょうか。
つまり、日本人の会議に対する苦手意識は、単なる練習不足にすぎません。
交渉・議論の能力は純粋な技術ですから、本人のスタイル、個性、ましてや国民性とは無関係です。
押しが弱い・主張しない国民性であっても、適切なトレーニングを受けさえすれば質を向上できます。

このハンディキャップは一朝一夕で埋まるものではありませんが、日本人が海外ビジネスで会議・交渉を進めるにあたり、とりわけ気をつけるべき具体的なポイントを2点挙げます。

日本人が海外ビジネス会議・交渉で押さえるべきポイント2点

握手をしている日本人ビジネスマン

①あいまいな表現を避ける

日本社会ではとかくあいまいな表現が常用化しているため、無意識に使用している可能性があります。

具体的なキーワードとして「前向きに検討します」、「調整します」、「~と思います」などが挙げられます。
日本の会議では最も頻繁に使用されるフレーズですが、海外会議においては最も使用すべきでないフレーズです。

商習慣・文化圏が異なる相手では、ただでさえコミュニケーションに誤解が生じやすいものです。
あいまいな表現は、誤解を招く最大要因であることを肝に銘じておくべきでしょう。

②言葉足らずを避ける

メッセージが正確に伝わらない理由のひとつは「言葉足らず」です。
以下、会議中の質問例文を取り上げてみましょう。

先日メールでお伝えした件に関して、納期遅れで2月末に間に合わないとまずい状況です。現在の進捗を教えてください

この場合、

  • 「先日メールでお伝えした件」
  • 「まずい状況」
  • 「進捗」

の3ワードが抽象的です。
こちらが何を知りたいのか、可能な限り情報を具体的にするべきです。

改善例として:

納期が遅れている製品ナンバー#20に関して、2月10日14時に貴社担当者に質問をお送りしましたが、未だ返答をいただいていません。納品予定が1月末日であったのにも関わらず、本日2月15日になっても何も連絡をもらっていません。弊社のクライアントから既にクレームが3度来ており、これ以上納品が遅れると契約解除の可能性もあります。2月末日までに必ず納品してもらいたいのですが可能でしょうか。また、それが難しいようであればその理由をご説明ください。

上記の例のように、正確な言葉を使うことによって、こちら側が知りたい情報を正確に引き出すことができます。

日本人同士であれば、共通認識が多く、空気を読む・察することが重要視される文化なので、正確な言葉を使わなくとも意思疎通がある程度図れます。
しかし、商習慣・文化圏が異なる相手に話をするときは、相手が情報を推測して補完する必要がないように配慮するべきでしょう。

非常にシンプルですが、この2点を会議前に反芻して意識しておくだけで効果が出るでしょう。

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この記事を書いた人

INTERP合同会社代表。28歳で通訳者としてのキャリアをスタート。50以上の職歴と複数の小規模事業の起業経験を通じて培った実務力を活かし、通訳にとどまらず、国内外のビジネスシーンで包括的な支援を提供してきました。「海外ビジネスの円滑化」と「関係者全員の利益と成長」を理念に掲げ、近年は人材育成に注力し、日本経済の活性化に微力ながら寄与したいと考えています。横浜市と米国ダラスで幼少期を過ごし、成人後は主に東京都、北海道、豪州シドニーに在住。2023年に家族と共にマルタ共和国に移住。

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